G.R.E.S. アカデミコス・ド・グランヂ・ヒオ 2018


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"優勝でいい?ダメ?"


「、、、カルアル開拓者のホーン、あれにはみんな夢中だったんだ。たとえるなら、小鳥がさえずるのに魅かれるようなもんさ、、、
という話を聞いたのは、オヤジが運転する緑色のトラックの中だった。トラックには、オイラが崇拝し、すべての成功や加護についてそのおかげだと思っている聖ジョルジ、、、に倒される竜の絵が描かれていた。クラクションが鳴り続けていた、、、
あの音だ!オイラが決して忘れるわけにはいかなかった音、、、」

−テレジーニャ、ウウー!!!!!
−グランヂ・ヒオ、ウウー!!!
−優勝でいい?ダメ?
−説明しに来たんじゃない、引っ掻き回しに来たんだ!!!!!
−コミュ障は苦労性!、、、

近頃、みんなオイラのことを怪物と思っている。そう、コミュニケーションのか・い・ぶ・つ!
オイラにはルーティーンなんかない、台本もない、タイムレーコーダーも、進行や音楽・映像の演出すらない。全部、基本にあるのはドッキリさ。オイラ自身が作って、指揮して、披露するんだ。てな具合だけど、わかったかい、若いの?
お約束をぶっ壊して、上品にとりすましてる連中をコケにしてやったのさ。逆に、さえない一般人や天才的なアーチストのことは、いつも応援してきたぞ。

−やあ、やあ、テレビをつけませーい!!!テレビ・グランヂ・ヒオの新番組の始まりだよ!

誰も思いつかないようなことをでっちあげるのがオイラは好きだ。ジョッキー風のジャージの前身ごろに電話機のダイヤルとかいうデザインもそうだな。色々なカッコをするんだ。バレエダンサー、天使、ピエロ、ナポレオン、ゾロ。
− シャクリーニャに決まったスタイルなんかないーの、ミスター・ニコリーノ!全部入りで、なんでもあり。そして事件はリアルタイムの現場で起きたんだ。新し いものがどんどん現れて、新しい声がブラジル歌謡界の景色を変えていった。それをオイラはまるごと取り入れた。ジョーヴェン・グワルダなんかについては、 まさにこれだな:

−ホベルト・カルロスのパンツが欲しい人ぉぉ?????

「、、、こんなこと考えるボクのことを、人はバカという
 幸せになるには、自分、バカすぎるかもって
 けど、そんなこと言うやつらの方がバカだし
 不幸せだよ、不幸せだよ」−(オス・ムタンチス)

−オイラこそが、バカの先駆者だ!
で もって、トロピカリアの父だ。オイラの視覚と嗅覚からして言えることだが、トロピカリア運動が起きる前から、オイラはその実践者だった。早い段階で、イラ セマとイパネマとか、エレキギターとヴィセンチ・セレスチーノとかをくっつけてたんだからして。トロピカリアのことは、オイラにはわかっていた。ていう か、書き上げてサイン済みたいなもんさ。「アレグリア、アレグリア!!!」ってのも、オイラが使っていた決め台詞で、それをカエターノが取り上げて歌にし たわけよ。

−やあ、オイ!やあ、オイ!

「、、、シャクリーニャはでっぱらをゆすり続ける
 若い娘をからかって、客席をあおり
 そうしてステージに指図し続ける、、、」

オ イラの番組は、スペースを広く取った自由な舞台で、前例踏襲型とか保守的な向きにはウケない感じだった。トロピカリア、スーペル・バカーナ、ドミンゴ・ ノ・パルキ、ムタンチスばんざい。ロック、セレスタ、コラサォン・ヂ・ルート、それに空飛ぶ円盤ばんざい!古代的で現代的なブラジル!風に揺れるバナナも イェイェイェも、アフリカの首飾りもプラスチックの服もばんざい。インディオ風の柄の服で、額には鏡。
ブラジルのジェレイア・ジェラウばんざい!そして、いつものハグを、勝ち残りの人に、、、
ペ ルナンブーコの老いた羊飼いのように先頭に立っていたい。軽口を叩いて、若い娘をからかって、客席をあおって。シャクリーニャのラッパでな。ブーイングも 上等だいや、ミスター・マイヤ!マイクの前でおどおどしてた若造がいきなり空気を変えたかと思えば、ピンクパンサーのテーマに乗せてシャクレッチ(訳注:アシス タント枠のダンサー)が例の超ハイレグでエロカワなショーを見せる。最高だぜ!

−どうだーい、元気かーい?今日は歩きかーい、電車かーい?

何 度でも言うよ、マリア様、世の中なんでも詩のようにはいかないや様。シャクリーニャが眠る裏で、アベラルド(訳注:本名)はIbope(訳注:ビデオ・リ サーチ的な調査会社)というお化けのおかげで眠れないわけよ!オイラ、何も知らなかったな。報告書に、計算表に、視聴率、、、ABCD...Zって視聴者 層毎に出てくるやつね。とにかく無知だった。ああ、けがれ無き迷える仔羊。といっても、こっちだってバカじゃないってんだ、なあ相棒、つーいーには、つー いーには、この業界がどう動いてるのか、わかっちゃったもんね。
そこで登場したのがフロリンダ嬢。オイラを愛したスパイね。彼女がオイラのために なんでも調べてくれたおかげで、こっちはラジオとテレビを合わせて週に10本以上の番組製作に集中できた。フロリンダ嬢は、メモって、録音して、録画し て、読みこんで、メディアでなにが起きているのかオイラに教えてくれた。それだけじゃなく、番組が上手くいかなければシャクリーニャ相手でも遠慮なく批判 してくれたし、もちろん、すべて上手くいったときには絶賛してくれた。

−パイナップルが欲しい人ぉぉ?オルランド・シウヴァが欲しい人ぉぉ?ヴァンデルレイアのショーツが欲しい人ぉぉ?

スタートはこの顔ひとつと勇気だけ。一文無し同然の、ただの知らないおっさんとしてね。じゃあどうんすんだぜ、ミスター・ゼ?まずはリオデジャネイロに拠点を移さなきゃならなかった。まあ、ルチア様もおっしゃってたように「やがてすべてうまくいく」ってね。
で、うまくいったと。
え、もっと?犬じゃないんだからさ!
まあ、ラジオ波とテレビ・チャンネルにひと波乱起こしてやったってだけのことよ。

オ イラにとってコミュニケーションというのは、合わせて、繋いで、そして丸ごとひっくり返すことさ。でも、まーじーで、まーじーで、全部ラジオから始まった んだ。鼻声で言葉遣いの怪しい、気弱なアベラルド・バルボーザが、老道化師シャクリーニャという別人格を手に入れたんだ。ニテロイの小さなシャカラ(農 園)つまりシャクリーニャから放送していたラジオ番組「カシーノ(カジノ)」のおかげでね。そうして段々、リスナーが増えていった。他の州でも、そしてブ ラジル国外でも。

−言ったる、ブラジル。元気みなぎる。聴こえりるぅ!

「カシーノ・ド・シャクリーニャ」の出 演は、オイラとアシスタント一人だった。その状態で、カジノっぽい雰囲気が出るように作りこんだ。ルーレット、チップ、BGM、参加者、笛、大物の来場と 仰々しいアーチストの出迎えとか。そういうみんなの衣装設定までオイラは作りこんだ。どれも、あの時代にしては安っぽくておかしなやつだ。カジノにただよ う匂いもね。リスナーの目には見えてたんだ。彼らは感じてたんだ。夢見てたんだ。暑い夜や寒い夜を。ラジオがみんなをひとつにして、夜の寂しさをぶち壊す ことで。
「違う!それ、石鹸と違いますとん、ミスター・アントン!」

−さあ、ぐるっと回って教えてちょうだい!優勝は誰?パイナップル野郎?イケメン?鼻声くん?吃音くん?若づくりちゃん?マダム?女社長?メイドさん?歌、うまかった?それとも草笛並み?
と にかく徹底的にムチャクチャにしたかった。観客が絶賛するか罵倒するか。ブラジル中から集めた、最悪級にノミだらけの犬、最高の商品、最高にかわいい子 供。何分と続かない名声。そして狂気の象徴たるホーンが生命や記念日を祝う。聖コスマスと聖ダミアヌスばんざい!復活祭のウサギばんざい!9月7日(訳 注:独立記念日)ばんざい!父の日、母の日!あなたにもばんざいするけん、ミスター・アラケン!

−そして、カーニバルばんざい!つまるところ、鉄でできた人間なんていないんだから!!

オイラはシャクリーニャを離れて控え室に向かいながら思う、、、
−オイラはどんな王様なんだろう?
−王様は裸だ。真っ裸だ。終わっちまった番組じゃあ、終わっちまったら、、、

オイラはスルビン生まれの東北人だ。ヘシーフェでオヤジの洋品店やオフクロのペンションを手伝ってた。薬学を3年勉強したけど、やめた。ヨーロッパに船で渡ってジャズ・ドラマーをやってたけど、第二次世界大戦があって帰ってきた。
オイラに色々気づかせてくれた愛しいヘシーフェの目がくらむような街灯りが、いまだに目に浮かぶ。
アルセウ・ヴァレンサが歌う素敵なフレーヴォを聴きながら、オイラはその行列に着いて行く、、、

「回って、回って、回って、知らせてよ
 喜びが宙に爆裂したって
 老兵は笑いながら
 上っていく、上っていく、空へ、遊びに
 回って、回って、回って、だって人生だって
 終わりがくる夢のようなもの
 優秀な道化師は泣かないもの
 言い訳しないで消え去るもの、、、」(アルセウ・ヴァレンサ)

−ゴキゲンだぜ!

ヘナート・ラージ、マルシア・ラージ

サンバ・エンヘード
作:エヂスプーマ、リシーニョJR、エスカフーラ、マルセリーニョ・サントス、ジウネイ・ブエノ、エリオ・オリヴェイラ

「ショーは終わってない」
愛する人々の腕に抱かれてパレードに向かう
「またしてもハメはずしだ、サイコー」
「もってくれよ、心臓」
進みながら、歌いながら、歌に合わせて
オイラは老兵、トロピカリスタ
説明は求めないでよ、むしろ困らせる側だし
オイラのラッパがなったら、、、パイナップル賞だ、持ってきな

「やあ、バイアーナ」、、、揺れる姿に魅せられて
回って、教えて、オイラのサンバに加わって
「笑うとこ見せて」「歌うとこ見せて」
「マリアなのかジョアンなのか」はおいといて

「サウダーヂといえば」
白黒テレビ
ラジオの電波にのせて、愛の歌を奏でる
奮闘努力の「製作者たち」
オイラのフロリンダ、咲いたよ、最高に美しい花(フロール・リンダ)
「農園(シャクリーニャ)」オイラの命名元そして出発点
「感動」で泣きながら、ぶっこわれそうだ
オイラはアベラルド、あのハグでおなじみ
「ヘシーフェ」、、、血管に流れる東北人の誇り
頑張りやの人々のフレーヴォに乗って
夜明けのニワトリが鳴くころにいっちまおうか

「ねーちゃん」、サイレンが鳴ったら
「皆の衆」が揃って歌う
「優勝でいい?ダメ?」
黒人の娘が現れて、お尻を揺らす
オイラはテレビで輝く、またみんなが言うのを聞く
「ああテレジーニャ!ああ、テレジーニャ」
「今日もはじまるよ、カシーノ・ド・シャクリーニャ」
「ああテレジーニャ!ああ、テレジーニャ」
「今日はグランヂ・ヒオが、カシーノ・ド・シャクリーニャ」

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