カーニバル蕃書調所
Instituto de Pesquisas de Informações Carnavalescas
設立趣意
当所は、リオデジャネイロのカーニバル情報、特にエスコー
ラ・ヂ・サンバのエンヘード(シノプス)の翻訳を通じて、パレードで表現されるテーマ、主張の理解を促進するとともに、その根底に流れ、大衆文化発展の鍵
となる、思考、行動様式を調査、紹介し、もって我が国におけるサンバ文化の振興発展に資することを目的とします。
(平成22年11月11日)
内容
追 記(「シノプス」について)
シ
ノプス(スィノープセ、英語ではsynopsis)とは、「梗概(こうがい、あらすじ)」です。実際は「あらすじ」という言葉ほど荒くなく、A4で数枚程
度にまとめられた、ちょっとした読み物になっています。例年のルールでは、各エスコーラ・ヂ・サンバは7月31日までに次年のカーニバルのパレードで表現
するテーマについて記載したシノプスをLIESAに提出しなければならないことになっています。実際は、それより前(6月ごろ)に発表されているようで
す。
我々がシノプスに注目するのは、それがカーニバルのパレードにおける表現を理解する鍵の位置にあると考えるためです。まず、構想としてのエンヘード(企
画)を文書化したものであること、つまり、それを通じてエスコーラ・ヂ・サンバないしカルナバレスコの思考をうかがい知ることができることです。また、そ
れがサンバ・エンヘード、パレード構成、山車・衣装のデザイン、の原典、大本となっていることです。さらには、それ自体の面白さです。かつては「カルナバ
レスコ史観」と揶揄されるように、歴史を不確実かつ勝手に解釈したエンヘードもあったようですが、近年(数十年レベルで)改善され、ブラジルの文化史を知
る窓口としても興味深い資料となっています。
サンバ・エンヘードの歌詞を追い、流れていく山車やアーラを見ていけば、何の話なのかは概ね理解できますが、その前段階の「何を伝えたいのか」「どういう
論理構成なのか」ということについては想像するしかありません。そこを明文化した公開資料としてのシノプスを確認することで、パレード表現の理解度が大き
く違ってくるものと信じます。
もちろん、シノプスが全ての解であるとは考えていません。名目上「鍵」の位置にあることは間違いないところですが、実際のプロセスから見れば、少し割り引
かなければならない部分もあります。まず、構想があり、「こういう話で行こう」というアイデアをまとめてシノプスが書かれます。サンバ・エンヘードはそれ
を歌で表現しようとするものなので、概ね直接的な関連を観ることができます。ただし、パレード構成や諸々のデザインについては、シノプスとサンバ・エン
ヘードを踏まえて、カルナバレスコを中心として「どう表現するか」、「どのようなサプライズを仕込むか」という工夫が盛り込まれる段階といえます。ここが
「お楽しみ」でもありつつ、理解しにくい部分としても残るところです。
この問題については、ブラジルの一般観衆にしても同様で、テレビ中継の解説を聞いて「ああ、そうだったのか」と気づくことが多々あります。そのギャップを
改善すべく、2010年以降、Multiplicarという会社を通じて、「Roteiro dos
Desfiles」という冊子が来場者に配布されるようになりました。これは、各エスコーラが本番の1ヵ月前あたりに設定される締切日までに提出する、パ
レード構成(アーラ、山車のコンセプト)を記した書面(Roteiro do Desfile)を基に、シノプスの概略やサンバ・エンヘードの歌詞と合わせて、全エスコーラ分をまとめあげたものです。従来は審査員やテレビ局にのみ配
布されていた厚い解説資料(「Abre-Alas」)の情報から、その概要を一般人が容易に確認できるようになったということです。これについても、シノプスと合わせてできる限り紹介していきます。
審査員用の解説資料にあたる「Abre-Alas」という冊子には、衣装や山車や振付の意味、バテリアの構成等、各エスコーラから提示された審査項目毎の補足や説明が書かれています(Roteiro do
Desfileもここに含まれます)。本来、これも紹介すべきなのですが、残念ながら翻訳が追いつきません。近年はLIESAのページ
上にPDFで公開されるようになっていますので、興味のある方は覗いてみてください。
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