ベイジャ・フロール2017
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版
“蜜の唇をもつ乙女、イラセーマ”
導入
私たちの企画は、一遍の小説を下
地としています。そこに描かれているのは、ポルトガル人のマルチン・ソアレス・モレーノと、タバジャーラ族の少女、名前をイラセーマという、蜜の唇をもつ
乙女との出会いです。主にセアラを舞台とし、ヤシの木にとまったインコが歌う、緑の森をたたえた楽園的な豊かな自然を背景としています。
褐色の肌をした、たおやかな、花のように美しい、インディオの少女、それがおまえだ、ああ麗しきイラセーマ!おまえの純粋さが、同時に魔法と誘惑を引き起こす。
そして風に運ばれたその魔法に、マルチン・ソアレス・モレーノは息をのみます、、、
褐色の(モレーナ)肌をした彼女、モレーノという名の彼、、、
二つの異文化がロマンティックな形で出会うというこの設定は、わが国に関わる恋愛小説ということ以上に、簡潔にイラセーマがブラジル文化を代表し、マルチン・ソアレスがヨーロッパ白人文化を代表しているという点で、重要性を持っています。
細かく作りこまれた物語には、セアラの歴史と混血の成果、おそらく世界初のマメルーコ(インディオと白人の間の混血児)、の誕生が巧みに盛り込まれ、我らが大いなるブラジルの複合性とセアラの伝説が、絡み合うように、独特なスタイルで描かれています。
背景
私たちはみな、原住民(インヂージェナス)です!!!
定義上、自分の(インヂージェナな)国であるうえに、私たちにはブラジルの――この地の正統な所有者である――インディオたちの歴史があります。記録こそほどんどないものの、私たちへの遺産は、口伝によってほぼ完全に残されているといえます。
イラセーマ(トゥピの言葉で「蜜の唇」を意味する)は、セアラの物語で、州のシンボルとなっています。重層構造的な展開によって、ひとつの物語の中に、ロ
マンス、情熱、ドキュメンタリー、サスペンス、フィクション、戦争、幻想、抽象がまとめあげられています。ブラジル文学の名作のひとつに数えられる、この
インディオものの国文学が、「蜜の唇をもつ乙女、イラセーマ」と題する私たちのカーニバル企画の着想のもとです。
第一に、これは愛の物語、美し
い愛の物語です!!!そして、ブラジルの物語でもあります。ブラジルらしい私たちのブラジルの物語、、、最初のマメルーコ、お茶目な混血児の誕生と成長
が、ジョゼ・ヂ・アレンカールによって巧みに語られています。この作品には、作者の生まれ故郷と出自に対する、愛に溢れた思い出と潜在的なサウダーヂが込
められています。それゆえに、すべからく生き生きとして、色鮮やかで、非常に詳細な記述となっているのです。純粋、潔癖、貞操を象徴し、主神トゥパンの聖
なる蜜の泉の異名をもつ、原住民の少女が、偶然外国人兵士と故意に落ちてしまうという物語。そこに、二つの人種の出会い、その間に芽生える恋愛、その結果
生まれる初めての混血ブラジル人、まごうことなきセアラ生まれの子供、、、が描き出されています。
私たちは、独創性を発揮して、文字を衣装に、
詩を山車に、本をカーニバル(企画)に移植するという難しい技に敢えて挑戦します。物語を国民的スペクタクル行事に、インディオを題材とした正調オペラを
露天に移し変えるのです。これが「蜜の唇をもつ乙女、イラセーマ」を取り上げ、膨らませようとする私たちの決意表明です。
またここで、「芸術が
存在するのは、我々が真実によって破壊されないようにするためだ」というフリードリヒ・ニーチェを引用し、あらためて幸せな心でイラセーマを抱きしめよう
と思います。作品としての『イラセーマ』こそ、私たちがナショナル・アイデンティティを見出すきっかけのひとつです。この物語によって、神話的あいまいさ
の中にあったブラジル成立の基礎を、確固たるかたちで把握することができます。それゆえに、機会さえあれば常に、再読され、再評価され、引用され、拡散さ
れ、受容され、吸収される、それに値する存在であり続けているのです。
イラセーマは、いつまでも、セアラの伝説であり続けることでしょう!
シノプス
散文詩。
小説、詩、ヒロイズム、リリシズム、歴史。
主神トゥパンの聖なる光に清められた少女、イラセーマ、蜜の唇をもつ乙女、純真無垢な存在、蜜を湛えた蜂の巣よりも甘い微笑みをもつ彼女は、木々が深く生い茂る只中の人の手が及ばない楽園に生まれた。
森の娘、エマ(レア鳥)よりも速く走り、その髪はグラウーナ(ミゾハシムクドリモドキ)の羽根よりも黒く、ヤシの枝よりも長い。純粋を最も単純明快に表したような巫女。
豊かな自然の青々とした茂みの中、星あかりの下、道端で起きる、突然のきらめきのような出逢い。自然と文明−イラセーマとマルチン、花と棘。
イラセーマ、、、少女であり、女であり、たおやかにして艶やか。その放つ矢は的を外さない。その顔に輝く、(文字通り*)アメリカ原住民らしい表情。
絵のように美しく、さらにけがれなく純粋にして、官能そのものを表したかのような存在。それを描き出す、胸と腰の完璧な曲線。
ジュレーマの秘密を守る者――村々の主の宝たる存在は、自らを守り、保持し、何者にも触らせずにいた。至高の愛に出会うそのときまで。そしてついに、恋に
落ちる。不響和音が鳴り、激しい情熱がほとばしる。それでもわかってほしい。肉体的な歓喜のためだけではないのだと。これこそが、待ち、望み、求めてい
た、魔法的な瞬間なのだ。ただし、その出逢いのために失うものも、、、
続いて、熱情の炎が強い関心をかきたてる。実現を望む心。熱望。歓喜の充足。二つの種族は結ばれる。彼はスカーフ、彼女は風。誘惑、優しさ、魅力。燃えるような男の欲望の目覚め、、、血管をめぐる血が、豊饒を表す。二人は、ひとつとなる。
タバジャーラ族、ポティグヮル族、ヨーロッパ人。槍、哀しみ、軋轢、戦い。白い肌と赤い肌。白い大地に赤い血。混ざり合う、調べと雑音、蜜と胆汁。
インディオを題材とした、この美しいオペラは、極彩色の情景を広げたその中に、豊かな種を描き出す。命の奇跡。モアシール、初めての混血ブラジル人の誕生を。
イラセーマは生き延びることがかなわなかった、、、しかし悲しむべきことではない。イラセーマは存在し続けている!!!この大地をつくる土のひとかけ毎
に、この地に生まれた子供ひとりひとりの血管に。イラセーマは生きた歴史であり、国民の象徴である!セアラは、いつまでもイラセーマでありつづける!!!
そして我々は、ベイジャ・フロール族の戦士である!!!揺らぐことのない信念をもち、主神トゥパンの力を信じる!!!完全に同調する、雷鳴がごとき音の魔
力と太鼓の鳴り響く音と地に響く足音、すなわち我らが祖先であり、この大地の正統な所有者である勇者たちから受け継いだ遺産を、我々は尊重している。青と
白の旗を掲げた軍隊として、我々はイラセーマを称える。蜜の唇をもつ乙女を。セアラの伝説を!!!
* イラセーマ(Iracema)は、アメリカ(America)のアナグラムでもある
カーニバル委員会およびカーニバル部: ライーラ、フラン・セルジオ、ヴィクトール・サントス、アンドレ・セザリ、ビアンカ・ベーレンズ、クリスチアーノ・バーラ、ホドリーゴ・パシェーコ、ヴラヂミール・モレレンバウン、ブレンド、ガブリエウ・メロ、アドリアーニ・リンス
訳注(補足として、原作『イラセーマ』のあらすじ):
ピチグワーラ族に助勢して戦闘に参加していた白人の兵士、マルチン・ソアレス・モレーノは、ブラジル沿岸部の森で味方とはぐれてしまう。そこで彼は、奥地
に暮らすタバジャーラ族の長アラケーンの娘であるイラセーマと出会う。イラセーマはマルチンを賓客として部族の集落に連れ帰る。やがて、ピチグワーラ族と
の敵対関係に気づいたマルチンは逃亡を試みるが、気づいたイラセーマが彼を引きとめ、兄カウビーとともに森まで案内すると申し出る。やがて二人の間に好意
が通じ、熱愛に発展する。イラセーマに恋心を抱いていた同族のイラプアンがマルチンの殺害を試みるなど、問題も生じる。
二人が結ばれた夜が明
け、当初マルチンはそれが夢の中の出来事と思っていたが、それが現実に起こったことであると知り、彼はイラセーマを連れて逃げる。しかし、マルチンを兄弟
と見なすピチグワーラ族の長ポチーと出くわしてしまい、二人は別れる。イラプアンをはじめとするタバジャーラ族の追跡も激しくなり、二部族間での戦闘とな
る。イラセーマと離れがたいマルチンは大いに悩むが、連れ帰ることはかなわない。コアチアーボという現地名を得たマルチンが戦線に復帰する一方、イラセー
マの妊娠が発覚する。愛しのマルチンと別れたイラセーマは体調を崩す。戦後、マルチンはイラセーマに再会する。彼女が抱く息子の名前は、「悲しみの子」を
意味する「モアシール」だという。瀕死のイラセーマは子供をマルチンに託す。そして、自らの亡骸をココヤシの木の下に埋めてほしいと頼む。その場所こそ
が、後にセアラと呼ばれるところである。
マルチンはモアシールを連れて一旦ポルトガルに帰るが、後にブラジルに戻って教会の教化活動を手伝うようになる。イラセーマを慕い、ココヤシの木のところをよく訪れたという。
サンバ・エンヘード
作: クラウデミール、マウリサォン、ホナウド・バルセロス、ブルーノ・ヒーバス、ファビオ・アレマォン、ヴィウソン・タター、アラン・ヴィニシウス、ベチーニョ・サントス
アラケーンが大地を揺るがした
集落全体に響いた
イラプアンの憎しみ
トゥパン神に仕える乙女がヨーロッパ人と恋に落ちたことで
このカボクロの住むところ
今日はアジュカーの日
二つの種族が争う
かくも美しきロマンスから、我がセアラは始まった
手にとれ、アメレー、アレテー、アナーマ
手にとれ、アメレー、アレテー、アナーマ
我らの土地のまさに中心で
うら若き乙女と戦士
男は矢を感じ、女は的を射止める
森に暮らすインディアに、恋に落ちた白人
我が村に来たれ、ハチドリ
タバジャーラ、ピチグワーラ、太鼓を強く叩く
開戦を告げる音、我が部族が到着した
赤き肌の純潔を主張し
モアシールの心臓が脈打つ
生命の神秘が、サプカイで私をマメルーコに変える
ああ、美しきイラセーマはサウダーヂの中に死す
かくも勇敢なブラジルの女
一筋の日光、我が日を照らす光
我が幻想の中に輝く
ヤシの木の上でインコが鳴いた
イラセーマの名を呼んだ
蜜の唇、ジャチよりも甘い微笑み
美しすぎる、クニャン-ポラン、イテレイ
私は歌う、ジュレーメ、ジュレーメ、ジュレーメ
私は歌う、ジュレーマ、ジュレーマ
愛の物語を、愛する人よ
それがベイジャ・フロールのカーニバル
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